特集
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2023.1.6
小学校の先生だった母の背中を追って、春から小学校の先生になるTさん。経験豊富な教育学科の先生たちの指導や実習に加え、アルバイトや部活動などシンジョで過ごした日々は、すべて教員の糧になったと実感しています。印象的な学びや活用したサポートについて聞きました。 教育学科での充実した学びが教員を目指すうえで大きな糧に ――そもそも小学校教員を目指そうと思ったきっかけは? 母が小学校の教員だったので、先生の仕事は私にとって身近なものでした。家族として間近に見ていて「大変そうだなぁ」と思うこともありましたが、子どもたちが一番成長する大事な時期を見つめられるのは、とてもやりがいのある仕事だとも感じていました。児童一人ひとりの目標や夢に向かって一緒に頑張っていける楽しみは、教員しか味わえない醍醐味だと思い、小学校の教員を目指すようになりました。 ――教員を目指す上で、シンジョの教育学科を選んだのはどうしてですか? 大学選びの第一条件は、小学校の教員免許を取得できることでした。シンジョは教員採用試験の合格率が高いと知り、志望しました。実際に大学生活を送ってみると、学科での学びや「教職支援センター」のサポートなど、さまざまな場面で合格率の高さを裏付ける工夫が施されていて、シンジョで学ぶことができて良かったと思っています。 ――シンジョで学べて良かったと思う点を具体的に教えてください。 1回生から模擬授業を経験できる機会が多く、子どもたちの主体性を育む授業づくりを意識しながら取り組むことができました。友人の授業を見る機会も多く、勉強になりました。ほとんどの先生が実際に初等教育の現場経験をもつ方なので、具体的な事例を交えながら実践的に学ぶことができる点もとても良かったです。「教職支援センター」の試験対策講座も充実していました。学生一人ひとりに合わせた合格へのカリキュラムが組まれているので、効率的な勉強ができますよ。学内説明会では、モチベーションを高めてくれるお話をしていただくこともありました。学科の友人たちも本気で先生を目指している子ばかりなので、一緒に勉強したり、お互いの勉強時間をSNSで共有して刺激し合ったり。モチベーションを保ったまま試験にのぞむことができました。 ――教員採用試験の勉強を本格的に始めたのはいつ頃でしたか? 3回生の12月頃から少しずつ始めていましたが、本格的にスタートしたのは年が明けた2月頃からです。教員採用試験を受ける学生のほとんどが使っている「セサミノート」という問題集で、ひたすら過去問を解くようにしました。過去10年分を3~4周はしたと思います。何度も解くので直接書き込まず、別の紙に回答を書くようにしていました。間違えた箇所は解けるまで何度も繰り返して自分の頭に叩き込みました。 ――教職支援センターはどのように利用していましたか? 4回生の試験の時期には大変お世話になりました。とくに2次試験の面接対策では何度も通って練習を重ねました。毎回本番さながらの対応で細かく改善点を指摘いただけるのが、とてもありがたかったです。 英語学習を通して子どもたちの視野を広げ、異なる価値観を尊重し合う心を育みたい ――4回生の教育実習ではどのような経験をされましたか? 私は小学6年生のクラスを担当しました。ちょうど思春期に差し掛かる年齢なので、最初は照れていたのか緊張していたのか、あまり話しかけてもらえませんでした。そこで、休み時間や給食の時間に積極的に自分から話しかけたり一緒に体を動かして遊んだりして、できる限りリラックスした時間を共有するように意識しました。すると、子どもたちが徐々に心を開いてくれて、いろいろな話をしてくれるようになりました。自分なりに工夫して子どもたちとの関係性を良い方向へもっていけたので嬉しかったですし、自信にもつながりました。 保育園・幼稚園から高校まで、教育のスペシャリストを育むシンジョ 人や社会の変化に柔軟に対応できる力を育むシンジョの教育学科。教員採用試験合格率の高さの秘訣は子どもたちと接する機会がたくさんあること。経験豊富な先生からの指導と現場での経験を交えながら、これからの教育の現場で求められる素養をしっかり積み上げ、憧れの先生への道を切り開きます! 詳しくはコチラ! ――教職のほかにも在学中にチャレンジした資格があるとか。 はい。幼稚園教諭免許と小学校英語指導者資格にチャレンジしました。幼稚園から小学校に上がると、子どもたちをとりまく環境はガラリと変わり、自分のことはすべて自分自身でしないといけません。幼稚園との環境の違いにショックを受け、心理的ストレスを感じてしまう「小1ギャップ」という問題があるんです。そこで、小学校に入学した子どもたちがどのような困難を感じているのか察知できるようになりたいと思い、幼稚園教諭免許にチャレンジしました。園児について学んだことは、今後の幼小連携や幼小接続の面でも役立つと思っています。 ――「小学校英語指導者資格」とはどういった資格ですか? NPO法人小学校英語指導者認定協議会が認定している資格で、アルクやイーオン、ECCといった教育系の事業者や大学などが講座を実施し、資格取得をサポートしています。2020年から始まった小学校での完全英語必修化により英語の指導能力が求められると思い取得しました。私自身、英語は苦手だったのですが、大学入学後に通った英会話教室が楽しくて英語が好きになりました。子どもたちにも、最初に触れる英語に苦手意識をもたず、楽しいことを知ってもらいたいです。小学生のうちに「英語は楽しい」「やればできる」と思ってもらえるように、歌や映画、音楽などを使った授業で英語に親しんでもらいたいです。 ――小学校教諭だけでも授業や実習などが大変だと思いますが、そのほかに2つも資格を取られたのですね。課外活動やアルバイトの時間はありましたか? アルバイトをして、スキー部にも所属していました。部活では主将を務めているので他大学と交流する機会もあり、忙しいなかでも充実した活動を送ることができました。私はアルバイトも部活も、学生のうちからいろいろな社会経験を積める場だと思っていたので、普段からマナーや人との関わり方を身につけられるよう意識していました。一見、教員とは関係ない活動に見えても、ここで得た経験が教員としての立ち振る舞いにつながっていると思います。 ――在学中、ご自身ではどのように成長したと思われますか? もともとどちらかというと消極的な性格で、本当は人前に立つこともあまり好きではありませんでした。教育実習や部活、アルバイトなどで多くを経験し、何かにチャレンジする勇気や行動力が身についたと思います。失敗もありますが、それは次につながる大切な経験だと前向きに捉えられるようになりました。 ――将来はどのような先生になりたいですか? グローバル教育に力を入れたいです。英語は低学年から学習することになりますし、これからの社会を考えると言葉だけでなく、歌や絵本、映画などを通じて文化の違いやおもしろさを知ってほしいです。私自身、さまざまな人の外国での体験談を聞く機会があり、視野が広がったと感じています。その経験や小学校英語指導者の資格を活かして、多様な文化や価値観を知る楽しさを伝え、他者を思いやり、尊重し合える姿勢を育んでいきたいです。 2022年11月取材 ※取材時4回生
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2022.12.5
教育学科に所属するIさん(初等教育コース)とTさん(幼児教育コース)は自他ともに認める大親友。今回は先生になるという目標に向かって勉強中の2人に、先生になりたい理由とお互いの存在についてインタビュー。後編はTさんからお話を伺いました。前編をまだお読みでない方はコチラ 写真左からTさん、Iさん 物心ついた時から子どもが好き。将来は幼稚園・保育園の先生しか考えられなかった 小学生の時から、既に幼稚園や保育園の先生を目指していたという市立琴丘高等学校出身のTさん。ご自身の幼い頃のお話から聞いていきました。 ―――いとこの中で一番年上だったことから、小さな子どもと一緒に遊ぶことが自然の流れだったそうですね。 そうですね。いとこ同士が集まるとき以外にも、地元の公園で近所の子どもたちと遊ぶときも、いつも周りには自分より小さい子がいた気がします。その子たちのお姉ちゃんになったみたいに一緒に遊んだり、面倒をみたりすることが大好きでした。 私自身が幼稚園に通っていた時、当時の先生のことが大好きだった記憶がずっとあって、小学校6年生の文集にも『将来の夢は幼稚園・保育園の先生』と書いていましたね。 進路選択では、学外で子どもと触れ合える環境が決め手に ―――幼い頃から幼稚園や保育園の先生を目指していたTさんですが、高校生の進路選択の時に悩むことはありませんでしたか? そもそも幼稚園の先生と保育士、どちらを目指そうかという悩みがありました。その時は高校3年生の時に、部活の顧問でもあった担任の先生から「あなたほどの子ども好きなら、絶対保育士に向いている」と背中を押して頂いたことで気持ちが固まりました。また、私の地元から通いやすい姫路近隣に保育系の専門学校があったので、そこでも保育士になれると考えたこともありました。 ―――では、数ある大学・専門学校の中からシンジョを選んだ理由を教えてください。 シンジョを選んだ理由はいくつかあって、まずは1回生の後期からコース分けがあるので、早い段階から自分の進みたい分野を深く学べると思ったんです。やると決めたらとことんやりたい性格なので(笑)もちろん、コースは幼児教育コースを選択していますが、幼稚園教諭、保育士の両方の資格を取得できることも理由のひとつです。 系列の幼稚園やこども園があって、園児たちがみんなでキャンパスに来てくれたり、私達が園に行って実習ができることや、それ以外の保育所、こども園などでのボランティア活動なども充実していることも魅力に感じました。4年間しっかり学ぶ中で、子どもの発達について現場で学ぶことができる制度が充実していると思ったことが最大の決め手でした。 少しでも長く子どもと触れ合いたくて、児童館でアルバイト シンジョに進学してから、様々な学びに積極的に取り組みながらも、もっと子どもと関わりたいと考えたTさんは授業でお世話になった先生に相談します。 ―――好きこそものの上手なれ、ではないですが、すごい積極性ですね。 本当に子どものことが大好きで、何かできないかと考えていたんです。先生に相談すると「児童館でのアルバイト」を勧めてもらいました。子どもと触れ合いながら、自分の将来のためにもなるのでやらない理由はありませんでした。今も週に2回、大学の授業の後に通っていて、「遊んであげている」というより、私も一緒に楽しんでいます。子ども達はみんな慕ってくれて、これまでにもたくさんお手紙をもらって…読み返すと毎回泣いちゃいます。(笑)私にとってパワーをもらえる宝物なので、全部大事に保管しています。 同じ境遇の友達と出会えたことが、大きな励みになった 入学から前向きに勉強してきたように思えるTさんですが、1回生の前期はコロナ禍の影響でオンライン授業だったこともあり、不安が大きかったといいます。そんな時に出会ったのが同じ教育学科のIさんでした。 ―――やはり入学当初のオンライン授業は難しい部分もありましたか? キャンパスに行くという当たり前のことが出来ず、同級生の勉強の進み具合や状況が分からずモヤモヤしていたことはありました。そんな時に、共通の友人を通してIさんと知り合うことができて、同じように悩んでいることがわかって、毎日連絡を取り合う仲になりました。その後は、すぐに私と似ているかも?気が合う!と感じるようになり、今では自分の人生の中で一番の親友です。本当に一緒にいて自然体なのにこんなに笑っていられるし、波長が合うというか(笑) ―――一緒にいて楽しいだけじゃなくて、お互い尊敬しあえる仲は素敵ですね。 私が頑張れるのはIさんのおかげです。Iさんがいなかったら…もしかしたら授業だけ受けて、ボランティアや課外活動には参加していなかったかもしれないですね。それぐらい、Iさんが頑張っている姿を見て、私も頑張らなきゃ!と思えるんです。 ―――Iさんはどんな方か教えてください。 Iさんは私よりも美味しいものを食べに行ったり色々なところに出掛けたりアクティブなんです。それでも授業以上の勉強をして、最近は保育士の資格にもチャレンジしています。どこにそんな時間があるの!?って思うぐらい。きっと、わずかな時間も無駄にせず勉強していると思うので、テスト期間中に勉強に行き詰まっても、Iさんはもっと勉強しているはず!私も負けられない!と思って頑張れるんです。 お互い、疲れやストレスが溜まったときには二人で美味しいものを食べにいって発散するんです。食べて、話して、また頑張る。そうやって卒業まで、ずっと一緒にいると思います(笑)私達は将来、別々の道を歩みますが、お互いが休みの日には二人で会う時間が絶対にあるって断言できます。これから先も、ずっと親友だって自然に言えちゃいますね。 取材後には、『シンジョに来たことで、励まし合い、尊敬できる親友が出来たことが一番よかった』と声を揃えて話してくれました。二人の笑顔と止まらない会話を聞きながら、二人の努力は必ず実を結び、素敵な先生になってくれるだろうと確信した一日でした。
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2022.12.1
高校卒業後、ファッション系専門学校へ進学するつもりがシンジョへ入学したことをきっかけで、4年間で人生がガラリと変わったという、家政学科4回生のNさんにインタビュー。後編は3回生から現在、そして未来へと続くお話です。<前編をまだお読みでない方はコチラ> 海外留学をしてみたら、多様性に触れて人生観が変わった 3回生になる頃には通常のキャンパスライフに戻り、卒業へ向けて順調に学びを進めていたNさん。4回生の8月には念願だった海外留学を果たします。 「高校時代、留学のチャンスがあったのに挑戦しなかったことをずっと後悔していて、大学に行くなら今度こそ実現できればと思っていました。語学を学ぶだけではなく、海外の人のマインドにも触れてみたくて。ファッションも日本と全然違って弾けている印象があったので、実際に見て感じてみたかったんです。本当は2回生の時に参加するはずがコロナ禍で中止になってしまい、余計行きたい気持ちが高まっていたので、4回生で留学できると知った時は即決しました。」 シンジョは学部を問わず全学生が対象となる海外留学プログラムが多くあるため、誰でも海外留学を経験できます。Nさんが参加したのは、ハワイ大学での1か月間の英語研修。研修中はハワイ大学の近くにある「神戸女子大学ハワイ・セミナーハウス」に滞在し、職員のサポートを受けながら留学生みんなで共同生活を送れる安全性も魅力です。 写真 左からNさん、セミナーハウスでルームメイトだった英語英米文学科4回生Sさん 「留学中、午前中は英語のスピーキングの授業、午後はフリータイムの毎日でした。シンジョの留学生仲間に加えて、韓国からの留学生や、交流会で知り合ったハワイ大学の学生と一緒にいろんな経験をしました。ランチの後そのまま近くのビーチで遊んだり、ドライブに行ったり。とにかく毎日予定を詰め込んでいましたね。」 現地の学生と仲良くなると、あっという間に交流の輪が拡大。日本に興味があるという人も多く、上手に英語が話せなくても、優しく積極的にコミュニケーションをとってくれたそう。こうして同世代に限らずさまざまな人と出会えたことが、Nさんのその後に大きな影響を与えました。 「例えば、ハワイ大学を卒業してアクション俳優になった人や、私たちよりずっと年上なのに大学生として勉強を始めた人、4年にこだわらず納得いくまで大学に残って学び続けている人など、いろんな生き方の人に話を聞けました。日本の場合、4年間で卒業したら、企業に就職するのが一般的ですよね。でも、そうじゃない進路もたくさんあるんだなって……。」 そして、Nさんは大きな決断をします。 「留学前は普通に就職活動をしていましたし、ちょっと違う進路をとるにしても、大学院進学を考えていたくらい。ほんの少しだけ海外で生活してみたいという気持ちもありましたが、あまり現実的ではないという自覚はあったので黙っていたんです。でも、世界にはいろんな生き方の人がいると知って、『だったら私ももっとチャレンジしたい!』と。大学卒業後は、ワーキングホリデーを利用してイギリスへ行くと決めました。」 現地で英語を学びながら、ファッションをはじめとしたヨーロッパ独自の文化に触れ、感性を磨きたいというNさん。帰国後は経験を活かし、デザイナーか、スタイリストか、はたまたブランドプロデューサーか。何らかの形で、ファッションの世界で活躍することが目標です。 未来の自分へ贈りたい、最幸のウエディングドレス作り 大きな夢を抱き、現在Nさんは卒業制作の真っ最中。被服製作がテーマの十一(じゅういち)先生のゼミに所属し、ドレス作りに打ち込んでいます。 「十一先生のゼミは、思い思いのドレスを作り上げることが目標。私は純白のウエディングドレスに挑戦していて、マーメイドラインで裾フレアがポイント。派手な装飾はなくシンプルに、総レースで上品に魅せるドレスを目指しています。これまで授業の課題でジャケットやスカートを製作したことはありましたが、こうしてデザイン、型紙作り、生地の選択、縫製も、全て一から自分の手で行うのは今回が初めて。大変ですが、やりたいように自由に製作できるのはとても楽しいです。」 十一先生は、自分の好きなものづくりに生き生きと取り組むゼミ生たちを温かく見守りつつ、困った時には相談に乗り、的確なアドバイスをしてくださる、とても心強い存在です。 「ドレスが完成したら大切にしまっておいて、いつか自分の結婚式で着るのが夢です。その姿を、シンジョに進学するよう導いてくれた両親や親戚、そして恩師である十一先生に見ていただけたら幸せですね。」 十一先生とNさん シンジョで過ごした4年間で世界が拓け、たくさんの夢を見つけたNさん。「今となっては、本当にシンジョに進学して良かったと思っています。十分な時間と恵まれた環境の中で、いろんな学びに触れられたこと、いろんな人と出会えたこと、留学をはじめいろんな経験ができたこと、すべてシンジョじゃないとできなかったことなので」と、笑顔で力強く語ってくれました。
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2022.12.1
今回は、ファッション系専門学校へ進学するはずがシンジョへ入学したことをきっかけに、思ってもみなかったことだらけの4年間で人生がガラリと変わったという、家政学科4回生のNさんにインタビュー。まずは前編、入学前から2回生の頃までを振り返ります。 専門学校から大学へ進路を変えたら、視野が大きく広がった 小学生の頃から自分で着たい服を選んで楽しむファッション大好き女子だったというNさん。高校卒業後は服のデザインや製作を学べる専門学校への進学を決めていました。ところが、両親や親戚のすすめによって、最終的には大学進学の道へ。 「正直、大学よりも専門学校のほうが好きなことだけに時間をかけて学べると思っていたので、あまり乗り気ではありませんでした」とNさん。 「それでも、入学予定だった専門学校が3年制なのに対して、シンジョの家政学科は4年制。詰め込みの3年間よりも1年余裕があると考えれば、その時間を有効に使っていろんなことができるのかなと。なるべくポジティブに気持ちを切り替えました。」 1~2回生は一般教養と並行して、家政学の基礎を幅広く学ぶカリキュラム。2回生の終わりにコース選択を行うため、それまでは被服デザイン科学、住空間、生活マネジメントの3コースに関わる授業をまんべんなく受講できるのです。 「私はもちろん被服一択でしたが、それでも他のコースに関係する授業が意外と面白くて。インテリアの授業は自分の部屋作りの参考になるし、経済の授業は将来必ず役立つような家計や投資のことを学べるし。どの授業も興味深く、『視野が広がるとはこういうことか!』 と実感しましたね。それに、クラスメイトみんなそれぞれ興味のあることが違うので、一緒に話しているだけでもいろんな価値観に触れられて刺激になりました。」 コロナで日常が閉ざされたら、趣味の世界が広がった こうして楽しいキャンパスライフを送っていた2回生の春。新型コロナウイルス感染拡大のため、授業はほぼ全てオンラインになりました。 「画面越しだとどうしても伝わりづらい部分が多く、最初の頃はかなり消極的になっていました」というNさんですが、すぐに持ち前のポジティブ精神を発揮。 「通学もアルバイトもなくなって余裕ができたので、それまで時間を割いてこなかった自炊を頑張ってみたり、雑誌をたくさん集めて流行りのファッションデザインやコーディネートを研究したり。誰かに直接教わるのが難しい状況で、自分ひとりでも調べて学んで、何かスキルアップできることはないか模索していました。」 その中でも、一番ハマったのがインスタグラム。毎日の手作りごはんやファッションコーデ、たまに友達と出かけた時に撮った写真などに加え、例えば推しのアイドルグループが雑誌の表紙を飾ったら映えるように撮影してアップするなど、自分の趣味や好きなものを積極的に発信しました。 友人との外食のワンシーンの投稿 「写真の撮り方やオシャレな加工方法、効果的なハッシュタグの付け方は、独学でマスターしました。はじめはけっこう苦戦しましたが、慣れてくると自分が『こう見せたい!』と思う通りにできるようになって、どんどん楽しくなりました。 Nさんのインスタ力がアップすればするほど、フォロワーも増加。コロナ禍で家に閉じこもりがちになった一方で、特に同じアイドルを推すファン同士のネットワークがどんどん広がったといいます。 「年齢も住んでいる場所も関係なく、たくさんの友達ができました。少しずつ外出できるようになってからは、フォロワーの人と実際に会って話してみたり、そこから一緒にライブや旅行に行ったり、東京に遠征した時は現地のフォロワーの人の家に泊めてもらったことも。普通に生活していたら絶対に出会うことがなかった人たちとの輪が広がったのは、ほんとにインスタさまさまです。」 後編へ続く。
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2022.11.6
2022年4月に開設された心理学科。4年間の学びを通して、「臨床心理」「経営・消費者心理」「メディア心理」という3つのモデルで科学的な知識と実践的なスキルの習得を目指します。今回は「こころと社会をつなぐ」をコンセプトにしたシンジョの心理学科ならではの取り組みをご紹介。株式会社資生堂みらい開発研究所・佐藤智穂さんを外部講師としてお招きし、「美×心理学」についてとことん考えていきます。1コマあたり105分間のシンジョの授業だからこそできる、双方向展開の特別講義を取材しました。 心理学と社会のつながりが実感できるシンジョならではの特別講義 ―――第一線で活躍している方々を講師に招く心理学基礎の特別講義。今回登壇される佐藤さんとの出会いは本学の理事長が日本心理学学会の機関誌『心理学ワールド』を目に留められたことをきっかけにご縁をいただいたと佐伯准教授は話します。 心理学部 心理学科 佐伯恵里奈准教授 「化粧がどのように心に働きかけるのかを書かれた記事に感銘を受け、ぜひシンジョ生に話してもらいたいと思って声を掛けたんです。『心理学を社会に活かす』ことを実践する方の話を直接聞くことで、学生たちがたくさんのことを吸収するきっかけになれば。」 株式会社資生堂みらい開発研究所 佐藤智穂さん 「今回の講義を通して化粧や美の多様性について、学生の皆さんに自由な発想を持っていただきたいと思っています。」 ―――実際に学生に会うのは今回が初めてということで、直接反応を感じられる対面講義を楽しみにしていたと笑顔で語ってくれました。 化粧とは顔を装うだけじゃない!美しさの神髄へと迫る ―――1回生約60人に向けて『美と化粧品と心理学~化粧の心理学と化粧品開発への応用~』をテーマに行われた特別講義。まずは学生がチームに分かれ、事前に準備をしてきた『美』についての想いを発表しました。 授業では教育機関向けシステム「レスポン」を使用してリアルタイムに意見を集約して公開 学生時代に感じる美への憧れと、人生を重ねたときに感じる美しいものへの想いの変化についてのプレゼンテーションや、共通認識の独自調査などの発表には佐藤さんや先生たちも感心の表情。そのあとは佐藤さんから美しさにまつわる歴史的背景や、より良い未来・世界を目指す、資生堂の取り組みが紹介されました。 メイクによって気分が上がったり、心地よさを感じたりすることがどのように社会につながるのか、学生たちが熱心に耳を傾けている姿が印象的でした。 美がつなぐ日常と健康。そして人生の多様なシーンで活きる心理学の学び ―――講義の後半では、アイメイクを例に、一対比較法を用いた知覚実験や、大きさの恒常性など、美に関わる科学的背景が紹介されました。 一対比較法…被験者に刺激を2つ提示し、その刺激について評価や選択をさせ、刺激の主観的価値を測定する方法。人間の感覚的判断以外に計測法がないような分野において活用される。 ファンデーションよりもポイントメイクのほうがテンションを上げやすい理由や、化粧水や洗顔料の心地良さの追究など、日常のあらゆるシーンで心理学が多用されていること、スキンケアやメイクなどの化粧行為を通じて心身機能やQOL(クオリティ・オブ・ライフ=生活の質)の維持向上や健康寿命を延ばすなど、資生堂の化粧療法も紹介され「美とはその時の一瞬だけじゃなく、人生そのもの。自分自身がどういう風にありたいのか、どう感じているのかをぜひ自分に問いかけてください。それが心理学の第一歩。この講義を通して、自分自身に向き合ってもらえれば。」と佐藤さんは力強く語りました。 現場目線のプロフェッショナルな講義で新しい学びの扉が開く ―――大学生として学びながら、実際に心理学を社会に活かしている方のお話を聞けるのは貴重な機会。最後はグループワークの時間が設けられ、今回の講義についての自分の考えをブラッシュアップしたり他の人と意見交換を活発に行う学生の姿が見られました。 学生からの意見 「今まであまり美や化粧にこだわりがなかったのですが、美の奥深さや化粧品会社としての資生堂の熱い想いがすごく伝わりました。これからは幅広い視点を持ってものごとに向き合いたいです。」 「美しさは女性だけのものではないんだなと思いました。美しさはあらゆるジェンダーに開かれていることを忘れないようにしたいです。」 ―――グループワークにより、聴く力に加えて、話す力を自然に引き出す授業スタイルは、学生の数だけ見方や感じ方があることを全員で共有できるのがポイントです。講師から学生への一方的な授業にとどまらない双方向の授業が体験できるのは、シンジョならでは。佐藤さんと積極的なコミュニケーションをとる学生もいたりと、活気あふれる時間となりました。 シンジョの心理学科が目指す未来。ココロを知って新しい世界へ 心理学科で4年間をかけて心の専門家を目指す学生の未来を想い、学部長の小原教授は「今回のお話は心理学科の目指す姿とぴったり!」と笑顔で語ってくれました。 心理学部 心理学科 小原依子学部長 「心を知るということは、人間にとことん深く向き合うこと。そこから新しい価値を創造する力が生まれます。自分を知り、相手を知り、問題解決に挑むときに活きるのが心理学の知識や研究手法などの応用。学年を重ねて振り返った時、学びのつながりが感じられる環境を、学科一丸となって整えていきたいと思います。」 シンジョの心理学科は⼼理学の基礎を学んだ上で、臨床⼼理だけでなくメディア⼼理、経営・消費者⼼理を学べるという珍しいカリキュラムが魅⼒。今後も世の中の課題を解決し、幸せな社会「well-being」をつくり出す実践的な学びをご紹介していく予定です!シンジョの心理学科にご興味をお持ち頂いた方は心理学科のInstagram、Facebookも是非ご覧ください!
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2022.10.25
―「ma vie」デザイナー・葉山達也さん公開インタビュー― 2022年9月にリニューアルオープンした須磨キャンパスのラウンジ「ma vie」(マ ヴィー)。家政学部家政学科の「室内環境学」(担当:砂本文彦教授)を受講する学生たちが、学生の代表として責任をもってラウンジをどのような居場所にしていきたいかを真剣に考え、デザイナーの選定を行い、インテリアやラウンジの名称などについて率直で真剣な議論を重ねながら、完成へと至りました。 この記事では、2022年9月22日の完成披露会で行われた、「ma vie」のデザイナーである、コクヨマーケティング株式会社空間ソリューション本部の葉山達也さんへの公開インタビューの内容をご紹介します。 はじめに~「ma vie」に込めた「想い」 葉山さん(以下葉山):初めに、この空間に「ma vie」(フランス語で私らしさ)という素敵な名前をつけて頂き、ありがとうございます。オンとオフ(大学とプライベート)が交差する場と定義付け、「私らしさ」というコンセプトをどのように表現していくべきなのか。一つのデザインが求心力を持って広がっていく様を、先生や学生たちと一緒に共有出来たことが嬉しかったです。ma vieという素敵な言葉はロゴという形でも表現しています。ロゴは空間の顔です。明朝体が良いのか、それともゴシック体が良いのか。文字の間隔はどのくらい広げた方がコンセプトを表現できるのか。様々なことを考え、形にしました。 またグラフィックの展開として、先程配られたノベルティ(保冷バックやポストカード入りフォトフレーム)やポスターも制作しています。ポスターに関しては弊社にご指名頂いた段階で、頼まれてもいないのに、作ってしまいました。デザインの広がりを皆さまと楽しみたいという想いがあったからです。 本日は皆さまと一緒に「ma vie」という新しい一日を楽しみたいと思います。 砂本先生(以下砂本):まず、「ma vie」について、どのような想いで作られたのかをお話いただきますか。 葉山:ラウンジを形にする「想い」は、僕の想いの前に、学生の「想い」だったり、先生の「想い」だったり、神戸女子大学の「想い」を形で表現することを心がけました。デザインは自分の好みの色や形を見せるのではなく、道筋を作るプロセスだと考えています。今回のお話に当てはめると、この場はどのような場なのか、と考える所から始めました。神戸女子大学の正面入口の横、コンビニ横、授業の間、バスの待合、学生の居場所。仮説として導き出したのが、学生のオンとオフが交差する場。そして、ホームページなどでキャンパスライフなどを見させて頂き、仮説を深堀りしたのが「私らしさ」です。ここを皆さんと一緒に表現していきたいなと思いました。 私が座っているこの場所で床と天井の色を変えています。入口側が短時間滞在エリア、奥側が長時間滞在エリア。また、皆さんが座られている椅子の背もたれを見て下さい。プレゼン時にご説明をさせて頂き、覚えている方もいるかも知れませんが、背が抜けている椅子とファブリックを使っている椅子があります。短時間滞在と長時間滞在のエリア分けを家具でも表現しています。もちろん、利用していく中で、私こっちの方が好きだから長居するかな、というのは全然問題ないと思います。ただ、設計意図としては目的に応じたゾーンの使い分けをしたプランニングをしています。 ただ、短時間サイドの入口側にはソファを置いています。短時間なのに何故ソファなのか。これは正面玄関から見える位置に置くことで。居心地が良さそうなカフェのイメージを想起させ、入りたくなるような、利用したくなるような仕掛けとしてソファを置きました。 他にも様々な場を作っています。カウンター席ではゆりかごのように前後に動く椅子であったり、ビッグテーブルでは体を固めないグラグラ動く椅子。その椅子はレバーを引くとカチっと止まります。恐らく、こういった話は友達同士で伝えて言った方が広まりが早いのかな、と思います。奥には靴を脱いでくつろげる小上がりの畳席。またファミレス席など、様々な場を用意しています。いろいろな使い方があって、いろいろな使い方をしたよっていうのを友達同士で話して、たくさん「私らしさ」を共有して頂けたらいいな、という想いを形にしました。 砂本:葉山さんは、空間や場所の持つ「見えない」課題や個性をきちんと把握して、そこからどう組み立てていって、どういう場所があるとその場所性が生きるのかというのを言葉で説明ができて、それをさらに形にまでしていただけるという点で、非常に説得力があったと思います。その説得力が、学生たちにも伝わり、このプロジェクトに先立って行われた3社のプレゼンテーションの中で、最も高い得票率を得たのではないかと考えます。ここからは、大淵先生にバトンタッチして、インタビューを進めていただきます。 「見えないデザイン」と「見えるデザイン」~デザインの2つの側面~ 大淵:私はこのプロジェクトを、6月中旬に学内に貼りだされたポスターで知りました。この度、インタビュー調査や参与観察を専門とする社会学者という専門家の立場で、公開インタビューを担当させていただくことになり、各種資料を拝見させていただきました。そこで非常に感銘を受けたのが、「Transit Project」や「オンとオフの交差する場所」というキャッチコピーでした。社会学は、概念を生み出して、社会現象を説明するという意味で「言葉の力」に敏感な学問なので、とても印象的でした。そこでまず、キャッチコピーなどのイメージをラウンジという空間に落とし込んでいく、概念を空間に落とし込んで具体化する際にどのようなことに気を付けられたのかをお伺いしたいです。 また、ma vieの正面から見て向かって一番右奥にファミリーレストランの仕様になっている座席がありますが、その壁紙はとても華やかなで印象に残るものが使用されています。この華やかな壁紙は、最初のプレゼンテーションの時からずっとあったと伺いました。空間をデザインする上での個性的な部分とのバランスといいますか、守りの部分とチャレンジの部分のバランスをどのように工夫されたのかを伺えたらなと思います。 葉山:まずもって、皆さん、デザインってなんだと思いますか?よく誤解されているのが、色を決めたり、形を考えるのがデザインと思われがちなんですが、実はそれだけではなくて、デザインは見えるところと見えないところ、見えるデザインと見えないデザインがあるんです。色や形を考える見えるデザインをする前に、見えないデザインが大切と考えています。 見えないデザインって何だと思います?皆さんは薄々気づいているかもしれませんが、僕たちがプレゼンテーションの中で共有したビジョンからコンセプトまでのストーリーです。「この大学にはこういうのがいいんじゃないの」を考える前に、相手の想いをどれだけ引き出せるか、など下準備が大切だと考えています。それが皆さんの想いだったり、例えばホームページを見て、あれ?意外と神戸女子大学は個性的だな、だったり、シンジョガールズ白書で服装を見ていると、CanCanじゃないの?もしかしてViViなの?ViViの雑誌見てみるか、と好きな雰囲気を調べ始めたりします。出来る限り一個一個つぶさに調べていって、観察をするんです。そして集めた情報を状況に重ねて整理していきます。すると整理をしていく中で、問題点や気づきが出てきたりするんですよね。それが、プレゼンの時にお見せした仮説に当たります。この場所はもしかするとオンとオフが重なる場じゃないの?みたいな。そして個性を受け入れる「私らしさ」の場所に結びついていきます。柱は赤、床はフローリング調、こうしたらカッコいいんじゃない?から始めるのではなく、見えないデザインを踏まえたうえで、見えるデザインに繋げていくことが重要だと考えています。 例えば壁紙一枚を選ぶにしても、数学の答えを導き出すのではないけれど、順序だてて考えます。この空間において、ポコッとへこんだあの2つの変な空間。あの場をどう扱うか。一つは以前にもあった人気の小上がりの場の設えを整える。畳なので和テイスト。じゃあもう一つの場は同じようなものを作る?和風?私らしさって画一ではないよね。ソファ席がないから、ファミレス席がいいかな。入口から真正面に見える壁、アイキャッチとして少し際立たせてあげたい。じゃあ柄のクロス使おうかな。このように一歩引いた目線から考えていくと、選択肢が絞られてきます。私はセンスがないから色が決められない、ということを聞きますが、きちんと順序を経ていけば誰でも選べることが出来ます。そして、大外れは絶対しません。デザインが得意な人も、苦手な人も、見えないデザインを意識して、何か選んでもらえたらいいのかなと思っています。 大淵:「見えないデザイン」の中で「問題点」を発見して「仮説」を提案するために、様々な物事をじっくり観察することは、社会学の参与観察とも共通する部分でして、葉山さんがなさっている空間デザインとの共通点を感じました。 「疑問を持つこと、ニュートラルにモノを見ること」~デザインを考える際の心がけ~ 大淵:私たちはつい目に見えるものに基づいて考える傾向があって、見えないものから見えるものに落とし込んでいくには、訓練のように日頃から意識して行うことが必要かと思います。葉山さんはどんなことをされているのかお伺いしてもよろしいですか。 葉山:参考になるか分からないですが、基本的に頭の片隅で、デザインってなんだろうと、いつも考えています。いろんな人がいろんな答えを持っているので、デザインってこうだって主張した時に、違うだろうっていう議論も起こりますが、そういう時にでも心がけているのがニュートラル。可能な限り、偏った目線で見ることなく、常に新しい視点で、新しい気付きを得たいと考えています。例えば、何気に使うかっこいい、かわいい、のような形容詞ってすごく曖昧で、何故かっこいいのか、どうしてかわいいのか、前後関係を意識しながらトレンドや文化を感じ取るみたいに、、、。 少し伝わりづらい話をしてしまってますね。言い直します。昔、一休さんっていうマンガがあったんです。一休さんはトンチでいろんな問題を解決していくんですけれど、その中にどちて坊やっていう男の子が出てくるんです。どちて坊やは、何を見てもどちて?どちてなの?ってずっと聞いてくる子どもなんです。一休さんも困り果てて、トンチも効かないくらいにてんてこ舞いされるんですけど、僕の中にもどちて坊やがいるんです。これはどうしてこの形なの?どうしてこういう色なの?って。 物事の背景を考えることが日常的に出来るようになっていくと、自分の提案に説得力が出たり、共感が得らるようなデザインが出来ると考えています。なので、どうして?なぜ?という疑問をいつも持ちながらニュートラルな目でモノを見ようと心がけています。 大淵:すごくよくわかります。つい自分の体験を基づいた「ものの見方」をしてしまうことが多くあると思います。そうではなくて、偏見を持たずに物事をフラットにとらえて、ある現場に行った時に、「これはどうなっているんだろう?」「なんなんだろう?」と、わかるまで観察したり考えたりする。洋服やインテリアなど、何でもいいので、「どうしてこういうデザインなったんだろう?」ということをじっくり考えながら見ていくってことですよね。その他にも、映画や小説だったら、「なんでこの展開になったの?」と考えながら見たり読んだりするとか。身の回りのどのような事柄でもいいので、ニュートラルにフラットに物事をとらえて考え続けることが、いつか何かにつながって、「あの時考えていたあのことが、このデザインに使える!」みたいな、引き出しのひとつになっていく。そういうことをおっしゃりたいのかなと思ったのですがいかがでしょうか。 葉山:はい。 大淵:ありがとうございます。 「100を1にする」~承認を得るプロセスとしてのデザイン~ 大淵:ma vieは先ほどもおっしゃっていたように、最初にコンセプトを決めてデザインをされていかれましたが、学生の皆さんの意見を取り入れつつも、取り入れられなかった部分もあるのかなと思います。葉山さんは、以前の打ち合わせの際に、「デザインは承認を得るプロセスである」、つまり、「理解をしていただいた上で進めていく」とおっしゃっていました。ただ、デザインとして通すべきところと、少数派だけれども取り入れていきたい意見と、この意見を取り入れてしまうとデザインが崩れしまうなど…。承認を得ていくといっても、取捨選択が難しいところがありますよね。学生の皆さんたちも、室内環境学の授業の中で話し合いをしてこられたと伺っていますが、合意形成が難しかった経験もされたと思うんです。意見の見極めというか、取捨選択と言いますか、葉山さんはそのあたりをどのようになさったのですか。 葉山:例えば、この空間に200席入れてください、というお話があったとします。物理的に無茶な話ですよね。先程の話と通ずる所があるのですが、どのように200席入れるのかを検討するのではなく、どうして200席必要なのかを考えます。物理的な実証の前に、概念的に考えます。Aさんはこう言っている、Bさんはこう言っている、両方の意見が違っても概念的な所で共通点を探ります。その共通点が合意出来れば、納得感を持ちながら進めることが出来ます。今回でいうと、「オンとオフが交差する場所の私らしさ」の枠組の中で様々な意見を取り入れていく感じです。コンセプトの大きな枠組みの中での話し合い。もし、枠からはみ出るようなことを求められても、枠内に納まるような考えを示してあげる、あなたの意見をコンセプトに沿わすと、このような考え方になりますよ、のように。そこで意見を切るのではなくて、ビジョンの中に入れるような提案をしてあげる。ビジョンからコンセプトのように大きな枠組を共有しながら進めると関わる人たちが楽しくデザインに参加できるのかなと思います。 大淵:話し合いの場で、自分の意見とは異なる意見が出ると、戸惑うことや、どちらの意見を採用するのか、「0か1か」みたいなことが生じると思うんですよね。そうではなくて、コンセプトに基づいての合意形成、コンセプトに立ち返りながら異なる意見をまとめていく、ということですよね。 葉山:デザインって0を1にする仕事と言われることが多いのですが、多分そうではなくて、100を1にする仕事かと思います。いろいろな情報を並べて、整理して、条件を絞りながら100の考えの中で最適な1を導いていく感じです。僕たちは神様ではないので、何も無い0から1は生み出せない。だけど身の回りの中から必要な100を見つけ出し、組み合わせによる最適な答えと思われるものを作ることができる、デザインってそういう作業なのかなと思います。 大淵:ある意味すごく難しいですよね、100を1つにまとめていくのは…。 葉山:初めから1の解だけを見せても共感は得られないと思います。以前にデザインは承認を得ていくプロセスだとお話しました。ビジョンやミッション、パーパスといった1本の大きな芯を定め、コンセプトを通してオリジナリティを模索していく。クライアントの想いを形にしていくプロセスをストーリーに仕立て、共感を呼ぶ一連の流れが大切だと考えています。また、この流れの中心には自分がいることを忘れてはいけません。自分が思い描く、こうであったらいいのにな、を強い心で説得して承認を得ていかなくてはいけません。言葉遣いであったり、服装であったり、髪型であったり、自分の全てがデザインのプロセスの1つとして捉える。自分の軸を持って、真剣に話をすれば、僕の経験上、きっと耳を傾けてくれます。これがデザインの仕事かなと思っています。 おわりに~「自分軸」を見つける場としての「ma vie」 大淵:葉山さんがおっしゃったデザインの仕事を学生の皆さんの日常生活に置き換えて考えてみますと、自分軸を持った上で人に関わることで、承認を得やすくなっていく。もし自分軸がない場合は、あの人の意見もいいな、この人の意見もいいなと、サンドバック状態になってしまうこともあるかもしれないですよね。デザインを考える上では、「見えないデザイン」という共通のコンセプトに立ち返ることが重要ですが、ひとりひとりの人生と考えたときには、誰かにお任せしますという状態で話し合いをするのではなくて、何らかの自分の軸を持った状態で、人に向き合っていくことが大切ということですよね。 葉山:自分の軸を持つって、難しいですよね。僕はレストランでメニューを決める時に、あれも食べたいこれも食べたいって、いつも悩むんです。迷ったあげく、料理を口に入れたら、食べたいのはこれではなかったと思うことがたくさんあります。仕事も同じで、あれがいい、これがいい、と選んでいきますが、形になると、これではなかったかな、ああすればよかったな、と後悔や失敗があります。でもその失敗は人から見ると失敗ではなかったりもします。それはビジョンからコンセプトまで筋の通ったデザインを踏まえているから。形の失敗を失敗でなくす為にも、見えないデザインをしっかり考えた上で進めていくことが良いものを作れるのではないかな、と思います。 大淵:学生の皆さんは室内環境学の授業を通して、葉山さんと一緒に「見えないデザイン」を考えた上での「見えるデザイン」として大学の中の居場所を創る経験をしたと思いますが、「ma vie」というこの場所が、学生の皆さん一人一人の軸づくりの場、「私らしさ」の軸を見つける場になっていったらいいなと思いました。 神戸女子大学 家政学部 家政学科講師 大淵 裕美
商品開発PJ
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2022.9.27
若者の朝食欠食率が高いことに神戸女子大学の有志の学生が着目し、株式会社ローソンの指導のもと約5ヶ月をかけておにぎり弁当「ちびにぎまる」を開発。 神戸女子大学 × ローソン × 神戸市の産官学連携で発売(期間:2022年7月26日~8月24日)した商品を、兵庫県と企業とが連携して ″ 朝 ” を大切にする「HYOGO アサ@プロジェクト」の企画第一弾として、HYOGOアサ@プロジェクトともコラボして、ちびにぎまるを近畿エリアの店舗で販売します。 販売期間:2022年9月27日~10月24日 忙しい朝に「手を汚さずに手軽に食べやすい」「職場等でも人目を気にせずに食べられる」カラフルでコンパクトな、朝から気分が上がるおにぎりです。食材には、梅味とわかめ味の2種類のまぜごはんをひとくちサイズのおにぎりに、だし巻玉子、鮭、赤ウインナーなどお馴染のおかずを盛り付け。朝ごはんにちょうどいいセットおにぎりです。容器には紙容器を採用するなど、できる限りリサイクルや環境にも配慮されています。 開発した5カ月間のプロジェクトの様子 #1 ワークショップ編 #2 コンセプトメイク編 #3 商品設定編 Movie プロジェクトの様子(前編)
キャンパス
953
2022.8.21
神戸の魅力を再発見し、自分たちの手でプロデュースしたい!そんな想いで集まったシンジョ生たちによる新しい活動グループ『K→osmoseize(コスモシーズ)』。後編では、ここまで準備を進めてきた「北野はいからウォーキング」当日の様子をクローズアップ。1回生のFさんに当時を振り返ってもらいました。 私がチャレンジしました! profileコスモシーズメンバー 家政学科 1回生 Fさん大阪府出身。おしゃれな神戸の街に憧れてシンジョへ。1回生の春、「人の役に立てるような活動がしたい」とコスモシーズの第1期生になる。 北野はいからウォーキングって? 「神戸市北野町を盛り上げてほしい」という地域の声からスタートした地域活性化イベント。神戸再生支援チーム株式会社様の力を借りながらコスモシーズがゼロから企画し、事前準備から当日の運営まですべてを担当しました。 EVENT REPORT! 2021.June|ようやくイベント内容が決定! 前回のダメ出しから数週間。ブラッシュアップした企画を再びプレゼンし、北野の代表者たちからもようやくOKが出ました。イベント名は「北野はいからウォーキング」。レトロ喫茶、ランタン作りのワークショップ、神社のライトアップ、ファッションショー、この4つ企画を中心に展開します。 2回目のプレゼンは何を聞かれても的確に答えられるよう、入念に事前準備しました!決まってよかったー。 2021.August|待ちに待った夏休み突入!でも… 大学生になってはじめての夏休みは、メンバー全員でひたすら準備に追われます。一人でも多くの人にイベントを知ってもらうため、メンバー全員で神戸市内の小中高校(なんと300校!)に電話して、チラシを生徒に配布してもらうようお願いしたり、北野エリアにある60店舗以上のお店を取材してSNSにアップしたり。また、協力企業への交渉や会社訪問を行うなど、社会と直接つながる機会も。ビジネスマナー、言葉づかい…さまざまなことが勉強になりました。 学校や企業の方々のやさしさが心にしみました! SNSで発信♪ 取材したお店はイベントで配布するMAPに掲載 2021.September|古民家カフェを自分たちでDIY! イベントの目玉は、古民家を改装したレトロ喫茶。まずは、ホコリだらけの部屋を掃除するところからスタートです。木の飾り棚を作ったり、トイレのタイルを張り替えたり、全部自分たちの手でおしゃれなカフェに仕上げていきます。 2021.October|そして迎えた本番当日! 喫茶はやし 神戸発祥のものをつめこんだ昭和レトロな喫茶店。ジャズ、ラムネ、バレンタインチョコレート…神戸生まれのあれこれをギャラリースペースに展示してノスタルジックな雰囲気に。全15席の店内は満席状態に。たくさんの方にお越しいただきました! カフェメニューの材料はUCC上島珈琲さんに提供していただきました♪ 和×洋 ランタンワークショップ 北野ならではの多文化を取り入れたオリジナルランタン作り。和紙やリボンで作ったランタンをビーズやドライフラワーなどでデコレーションします。小さな子どもさんでも楽しめるよう、紙コップを使った手軽なランタンも用意しました。 北野コレクション 異人館の庭園で地域のみなさんによるファッションショーを開催。子どもから大人まで自慢のファッションで参加してくださいました。 光の世界~ランタンナイト~ 北野天満神社を色とりどりのランタンでライトアップ。普段とは違った幻想的な世界に、たくさんの人が足を止めてくれました。 大盛況のうちに幕を閉じた「北野はいからウォーキング」。コスモシーズの挑戦は、まだまだ続きます。 前編はコチラ Interview! 必死で駆け抜けた180日間。人を笑顔にする楽しさを知りました! 神戸といえば昔から“おしゃれな街”というイメージですが、実際には「観光客が減り、魅力を感じてもらえない」という課題がありました。大変なことも色々ありましたが、北野のみなさんに「今回のイベントで街に人が戻ってきた、ありがとう!」と言われた時は本当にうれしかったです。つい最近まで高校生だった私が、地域を代表するような方々にプレゼンをしたり、企業の方と交渉したり。自分でも信じられないほどたくさんのことに挑戦し、成長することができました。とは言え、まだまだ1回生。資格取得やサークル活動にも力を入れて学生生活を充実させていきたいです。 2022年3月取材 ※取材時1年生
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2022.8.20
神戸の魅力を再発見し、自分たちの手でプロデュースしたい!そんな想いで集まったシンジョ生たちによる活動グループ『K→osmoseize(コスモシーズ)』。ところが、メンバーのほとんどが県外出身で、神戸に関する知識はほぼゼロ。今回は、そんな彼女たちの初めての活動となるイベント「北野はいからウォーキング」をご紹介。1回生のFさんに当時を振り返ってもらいました。 私がチャレンジしました! profileコスモシーズメンバー 家政学科 1回生 Fさん大阪府出身。おしゃれな神戸の街に憧れてシンジョへ。1回生の春、「人の役に立てるような活動がしたい」とコスモシーズの第1期生になる。 北野はいからウォーキングって? 「神戸市北野町を盛り上げてほしい」という地域の声からスタートした地域活性化イベント。神戸再生支援チーム株式会社様の力を借りながらコスモシーズがゼロから企画し、事前準備から当日の運営まですべてを担当しました。 EVENT REPORT! 2021.April|まずは「はじめまして」の顔合わせ。 コロナ禍ということもあり、最初のミーティングはオンラインで開催。画面越しのため打ち解け合うのに少し時間がかかったものの、「みんなで北野の街を盛り上げたい」という想いはひとつ。コスモシーズの活動はこうしてはじまりました。 誰が先輩で誰が同じ学年の子かわからず、最初は全員敬語でした 笑 2021.May|北野の街を歩いて情報収集! 街おこしするには、まずその街を知ることから。5月のよく晴れた日、Fさんたちは北野に足を運んでみました。現地を案内してくれたのは地元の方たち。「北野にはこんな歴史があるのよ」「ここは日本で最初の国営オリーブ園があった場所」など、新しい発見の連続でした。 けれど、おしゃれな街並みが広がる一方で、観光客が減っているという現実も。さぁ、どうやって北野の街を盛り上げる?Fさんたちは授業の合間をぬって各自アイデアを持ち寄り、何度も企画会議を重ねます。 PICK UP!私が考えた街おこしのアイデア オリーブを使った料理教室 北野といえば日本におけるオリーブ発祥の地。オリーブを使ったヘルシー&おいしい料理で街を盛り上げる! カフェ巡りツアー レトロ喫茶やフォトジェニックなお店など、北野の街にはおしゃれなカフェがいっぱい。のんびりカフェを巡りながら北野の魅力にもふれるツアー。 小さなマラソン大会 大人も子どもも参加できる、北野坂でミニマラソン大会。 マルシェストリート 人通りが少ないエリアにおしゃれな屋台を出し、街の活気を取り戻す。 どれか選ばれますように!! 2021.May|人生ではじめてのプレゼン みんなで練りに練ったアイデアは20案近く。熱い想いを企画書にまとめ、いよいよプレゼンテーションです。相手は銀行や観光局、商業施設の社長といったそうそうたるメンバー。北野エリアを知り尽くしたプロばかりです。つい数ヶ月前まで高校生だったFさん、大人を相手にプレゼンするなんて人生初の体験です。「私たちの企画がちゃんと通用するのかな…」2、3回生の先輩たちの緊張も伝わってきました。 大人たちからの反応は? 「正直、もっと学生らしいとんがった意見がほしかった」「細かいところまで調べた上でプレゼンした方がいいね」投げかけられたのは厳しい言葉の数々。コスモシーズのメンバーは、考えの甘さを思い知らされたのでした。 「とんがった意見」って一体何ー!? 後編につづくよ! 後編はこちら